笛吹川東沢 釜ノ沢東俣 2012.9.15-16 その1
笛吹川…
沢登りをやる人なら誰だって聞いたことがある名前だろう。
近代登山の黎明期は明治時代だが、当時から山頂への登路として沢は遡行されていたらしい。
確かに登山道が整備されていない状況であれば、道なき藪尾根より、沢筋の方が歩き易い場合も多いかと。
ただ…
その頃の沢の遡行は、あくまでも山頂への登路として利用されているようで、まだ渓谷の美を感じるための「沢登り」ではなかった。
大正時代になってあらわれたふたりの登山家によって沢の遡行自体を目的とした「沢登り」の概念は生まれる。
黒部渓谷のパイオニア冠松次郎と、奥秩父のパイオニア田部重治だ。
冠松次郎は黒部を絶賛し、田部重治は奥秩父の笛吹川に魅せられた。
それが、日本独自のスタイルと言われる「沢登り」の原点だ。
そして…
笛吹川は、沢登り黎明期より、渓の先人たちから愛されてきた沢なのだ。
百名山で有名な深田久弥も、この笛吹川の東沢を遡行して甲武信岳に立ち、こう言葉を本に残している。
「日本の山の優秀さは森林と渓谷にある。」と…。
今回は、そんなクラシックな沢に行って来ました。
中央本線で塩山駅下車。塩山から西沢渓谷バス停へ。
そこから林道を歩き、沢沿いの踏み跡をたどり、「山の神」 付近まで、1時間30分ほど歩く。
釜が見える。初秋の明るい日差しが差し込んだコバルトブルーの釜が美しい。早く入渓した~い。(笑)
人気ルートだけあって、しっかりした踏み跡が付いている。赤テープの目印、分岐では道標までしっかりと。
沢にしては、やや至れり尽くせり過ぎる感もあるが、ここは首都圏からも近いし、沢初心者が先達の文献に憬れて入渓することも多い。
入渓してすぐ川原に出る。川原の淵の花崗岩の一枚岩スラブに目を惹かれる。
ここは自然に磨かれた滑らかな一枚岩の川底の表層を薄っすらと水がまとう、いわゆるナメ(滑)が美しい渓で名高いところ。
淵に見えるスラブを見ると、早くあのナメをフェルト底でヒタヒタ言わせて歩きたい!と胸がときめくのだ。。。
ちなみに、ナメが傾斜して角度が強くなるとナメ滝という。
なんて言ってると…、出た!… 東のナメ滝。
東沢に差し込む巨大な滑り台の枝沢。
ちょっとだけ登ってみた。
斜度のきついところは滑り出したら止まらないくらい。
立て続けに、西のナメ滝。こちらも東沢に注ぐ枝沢。
天然のウォータースライダーで澄んだ淵にダイブ!… 沢に入って、少年の心を取り戻します。(笑)
その後も、ちょいちょいとナメ滝やナメが出現して楽しい。
そして澄んだ水がたまりません。
この日は水量はかなり少な目だった。
魚止めの滝。この滝も全体が滑らかな一枚岩です。
ここを越えるとこの沢の前半戦クライマックスが。
滝上部の落ち口から魚止めの滝を見下ろした画。どうですか!この一枚岩のコロシアムのような滝壺。
磨かれたナメは、稜線の岩肌とはまた一味違う表情を見せる。
そして滝の向こうに…
千畳のナメ!
川幅いっぱい全てがナメ床。そんな光景がしばし続くのだ。
こんな美しいところは、歩き急いではいけない。なるべくゆっくりとまったりと行こう。
たくさんの渓谷美!ご馳走さまでした。
両門の滝の少し手前の川原でビバーク。
山行で、焚き火が楽しめるのは沢の特権。雨の日は難しいけど、晴れた日は焚き火を心行くまで楽しみたい。
翌日辛くなることも考えずに少々飲み過ぎた者が約2名。ひとりは私だ!…(笑)
つづく!…
笛吹川東沢 釜ノ沢東俣 2012.9.15-16 その2
あなたにおススメの記事
関連記事