キャンプ　と　ブルーグラス　第２

長女に誘われて早朝ランニングに出かけるようになったのは11月中旬のころだった。

時期的にまだ7時前まで薄暗くて恐いから私についてきてほしいみたいなことを言ってきて、
ついでに僕のダイエットの足しにでもなれば…　みたいな感じではじまったのが最初だったかな。。。

練習を始めて間もなく…
12月初旬に小学校の校内マラソン大会があり、長女は2位に入賞した。
その時1位だった同じクラスの友だちのSちゃんは、そのレースで長女に100mちかい差をつけてゴールしていた。
その圧倒的な走りは誰が見ても明らかで、男子と走っても先頭を譲ることのない絶対王者的な存在感だった。

校内マラソンの後も早朝ランニングは続き、1月中旬に開催される区のランニングイベントに向け頑張っていた。

なにか心に期するものがあったんだろうか。
毎日自分で目覚まし時計をかけ、早朝の寒さにおっくうがる私をせっつきランニングに出かける。

そのうち、Sちゃんも早朝ランニングに加わるとこになり
僕と小学2年生女子ふたりの三人組という妙な組み合わせの早朝ランニングが続いた。
一応ふたりの目標は、その大会でのワンツーフィニッシュらしい。
ちなみに去年その大会では、Sちゃんはやはり1位。我が家の長女は15位だった。
区内の各学校から足自慢の子供たちが参加するそのレース。校内マラソン大会に比べると遥かに層が厚い。

ほんとのところ長女は何を思って走っていたんだろうと僕は思っていた。
去年の15位が悔しかったから？…
その子とワンツーフィニッシュしたかったから？…
その子に少しでも追いつきたいから？…
いずれにせよ、先生や親に言われたからでなく、ほんとに何から何まで自発的で、
長女が初めて見せたそのピュアな向上心とその持続性に、ちょっとした驚きと戸惑いすら僕が感じていたのは確かだ。


さて…
大会当日。小学2年生女子の部は2kmのレース。
1位がSちゃんなのは誰の目にも間違いなく、僕的にも大会の見どころは長女が去年より何位順位を上げるかがだった。

スタートから約200m地点でまずは応援。
Sちゃんは既に独走体制。長女は3位で私の目の前を通過した。

ちょっと伏し目がちな目線。
いつも一緒に走っている時よりもかなりペースが早い。でもまだ2位はじゅうぶん圏内。
頑張れ！ありったけのエールを送った。2位以下はかなりの接戦とみた。

ランナーが折り返し地点から帰ってくる間に、ゴールまで50mの地点に移動し応援することにした。
レースの大詰め、ラストスパート地点。呼吸も脚も最も辛くなってくる。
少しでも僕と妻の声援が力になるんじゃないかと思い選んだ場所だ。
コース脇にはレースを見守る観戦者が列をなす。遠くの歓声が徐々に大きくなり先頭ランナーが近づきつつあるのが分かった。

先頭はやはりSちゃん。
でもその背後にピタリとだれかがついている。

だれだ？まさか…うちの子？！
そして長女はそのまま右側からするすると抜け出し僕の目の前でトップに躍り出た。


誰しも想像しなかった完全な番狂わせ。

もう僕はカメラのファインダー越しに眺めてなんかいられなくなり、ひたすら激を飛ばした。
後で長女に聞いたのだが、姿は目に入らなかったけど、僕と妻の声援ははっきり聞こえていたそうだ。

後ろから見て二人ほぼ同時にゴールしたように見えた。




沿道の観客の波をかき分けて長女のもとへ向かう。
走り終えた長女がこちらに駆け寄ってきて僕に抱きついてきた。「1位だったよ！」
ギュっと抱きしめ返しておめでとうを言った。


大会のあと、我が家とSちゃん家族は一緒に昼食をとった。
Sちゃんと長女がお互いの健闘を称えあってる様子がいい光景だった。


大会後もふたりと僕の三人の早朝ランニングは続いている。。。